生活クラブでは、安全性の確認が十分ではないということから、原材料はもとより、添加物(トウモロコシ由来の果糖液糖などや、微生物由来で抽出アルコールが対象)や家畜のえさに至るまでトレサビリティーを徹底し、遺伝子組み換え(以後GM)作物を利用しません。また、日本ではGM作物の商業栽培は行われていませんが、2004年に農林水産省がGMナタネの自生を鹿島港周辺で確認したと公表しました。私たちはGM作物が日本の環境に広がっていることを心配して、汚染の実態を確認しようと、「遺伝子組み換えいらない!キャンペーン」とともに2005年度から全国調査を開始しました。
2012年度の第7回GMナタネ自生調査全国報告集会は7月7日(土)福岡建設会館にて開かれました。今回は、そこで伝えられた今年度の特徴と、講演の内容をお伝えいたします。
報告を読む前の基礎知識
*原則、すべての植物を枯らすことが出来る「ラウンドアップ」と「バスタ」という除草剤が世の中にはあるのですが、これに耐性を持つ遺伝子を遺伝子組換えという技術でナタネに取り入れさせ、この除草剤をかけても枯れないナタネを作りました。これが「GMナタネ」と呼ばれているもので、「ラウンドアップ耐性」と「バスタ耐性」の2種類のGMナタネがあります。
*GM作物は、上記したような「組み換え作物そのものの安全性の不安」のほか、「ラウンドアップやバスタという有機リン系の農薬がかかった植物を食べることによる安全性への不安」、「環境中に広がることによる生物への影響」が心配されています。
*調査は検査キットで行っています。検査キットは米国農務省や日本の農林水産省が輸出入時の検査に使用しているものです。モンサント社のラウンドアップ耐性とバイエルクロップサイエンス社のバスタ耐性が検査できます。
*市民のだれもが参加できるように、「手引き」を発行し、それに沿って全国の市民が調査をしています。
*日本国内で売られてる「キャノーラ油」などは、GMナタネを原料としている場合が多いので、特には輸入港周辺と、そこからの精油会社への移動ルートの道路わきに自生するナタネを抜き取り、検査しています。また、内陸部の幹線道路なども調査することにより、汚染の広がりの実態も調査し、報告し合っています。
1、今年の特徴
◆最近の傾向と同じく、今年度も「バスタ」耐性のものが多く見つかっています。これは栽培地で「ラウンドアップ耐性の雑草(ラウンドアップをかけても枯れない雑草)が増え始めたため、バスタを利用する生産者が増えたことが推測されています。
◆これまで陽性反応の検体が多く見つかったことのない内陸部でおおくの陽性反応が確認されました。2次検査(PCR検査)をおこなった個体もありますがその数は少ないです。検査紙の反応が薄い色の2本線だったことなども各地で報告されています。来年にむけて監視を続けることにしました。
◆地域の自治体に意見書を提出する活動も呼びかけました。生活クラブ虹の街(千葉)でも千葉市に意見書を提出いたしました。
◆2012年度生活クラブグループの調査結果
18都道府県415検体についての1次試験結果は
陽性53(ラウンドアップ耐性5 バスタ耐性49)でした。
*全国の結果や詳しい調査報告内容は9月12日(水)10:00~のGMナタネ調査結果報告会にて報告いたします。
2、講演「原発事故から見えた遺伝子組換え技術の問題点」 金川貴博さん
◆原発もGMも物の土台となる部分を扱う技術のため、影響力は計り知れない。しかもどちらも安全だと唱える推進派と安全性を懸念する反対派がいる。GMの安全性に関しては、長年にわたって食べてきたという経験から判断されるので、推進派の人も安全を科学的に立証できないと理解はしているが、GM作物とそうでない作物は「同じ」(実質的同等性)と判断され、「同程度に無害」との考えに基づいて判断されている。それゆえ、GMにかんしては、慢性毒性の試験はしなくて良いことになっており、その理由は「結果的に原因がGMに由来しているか判断できないから」となっている。これは、「結果的に健康に害が出たとしても、必ずしも被ばくだけによるものと判断ができない」ということに似ている。
また、異常を示す動物実験の結果を持って意見しても、強固な「安全神話」が構築されていて、他の知見を一切無視しようという姿勢が見て取れる点も、構造的に似ている。
GMも原発と同じように「いらない」という意見もあるが、GM作物は収量が多く飢餓問題の解決などに、必要性を強調されてもいる。しかし、現在アメリカのトウモロコシは40.3%がバイオエタノールの生産に使われ、トウモロコシの値段は上がり、結果食糧として買える量は少なくなったのではないか。
◆「GMの反対派はGM技術をよく理解しておらず、感情的に反発している」というイメージを推進派の人々は、世の中の人たちに植え付けようとしている。しかし、実際、推進派の中では慎重派の人たちや、反対派の人たちの意見を議論することはなく、危険性に対する不勉強がはなはだしい。原発事故では、推進派の危険性の軽視が問題になったが、GM技術ではそれがもっとひどい。また、研究機関に対して法令に基づく適切な処置がとれず、研究者に危険意識が欠如している人もいるため、繰り返し法令違反がおこる。これはたとえば、「GM実験で大量に作った大腸菌を減菌処理せず水道に流した」とか、「インフルエンザウイルスのGM実験を行い、適切な拡散防止措置をとらなかった」などである。
◆想定外の事故にたいして、多くの科学技術について安全性を見直す時期がきていることを語っていると思う。
3、パネルディスカッション「隠れGMナタネ調査及び交雑種調査からみえてくるもの」
7年にわたる調査でわかったことは、汚染が年々広がってきているということで、輸入港や食用油工場への輸送経路は当たり前のように自生しており、その他自生する原因がわからないというような、内陸部でも自生が確認されている。
また、在来のナタネとの交雑をはじめ、他のアブラナ科との交雑もおきており、生物多様性への影響や、遺伝子組換えナタネを原料とする食用油を食べる危険性に加え、畑などでアブラナ科の野菜と交雑するなど、食品への混入の可能性まで出てきている。同じ遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシの調査も必要なので、そうなると、行政レベルの調査の必要性も意見していかなければならない。
隠れGMというのは、1次検査で陰性のものが、2次検査(PCR)で陽性と出るもののことであるが、交雑種にもある。交雑種がふえると、自然界に広がる可能性がある。
こういった問題が山積みではあるが、すべての根源は「輸入」にあるので、まずはこれを防ぐことが必要である。また、それ以前に、GMをなくす運動が大切である。同時に国産ナタネの増産の活動も大事である。
4、感想
今年の報告はかなりショッキングで、汚染が広がっていることが目に見えてきたと感じました。抜き取りという地道な作業も、すべてでなければ、徐々にGMナタネは広がって、帰化植物とおないように日本の全土にいつの間にか広がると感じました。
今はどこにでも見える、セイヨウタンポポもセイタカアワダチソウも、こうやって日本に広がってきたんだろうと思いをはせました。少しずつ少しずつ変わり、種というものが出来てきたその歴史を無視して、その流れを一足飛びにするような種を作り出すGMは、いろいろな弊害を必ず生むと思います。これから時を経て、私達の未来の子どもたちは、私たちの時代を何と呼ぶのでしょう。ゴミを残し、放射能をまき散らし、遺伝子までもいたずらにいじった私たちのこの時代を、素晴らしき時代と褒めてくれるのでしょうか。
負の遺産を少しでも清算し、次世代に引き継ぐものを生み出したいと思います。
生活クラブの消費材は値段が高いと言われていますが、GM対策をやめたら、価格は確実に下がります。でも、生活クラブはGMを対策をやめることはないでしょう。大地の会やパルシステムも、NON-GMの飼料を使用しているとうたいますが、買い付けに行ったり先頭を切っているのは生活クラブです。生活クラブがGMから手を引いたら、どこもやらなくなるでしょう。先頭を切ることはたいへんなことですが、とても意味のあることです。私は、そういうことからも、生活クラブは日本一の生協だと思っています。私がそういうと、たくさんの組合員が「わたしだってそう思う」といってくれます。
ぜひGMについて、よりたくさんの組合員に伝え、未来の地球に思いをはせ、GM反対の旗を振り続けようと思います。NON-GMO担当理事 山本百合