活動紹介

「電気を自前で」震災機に広がり

 

2012年05月27日:朝日新聞

 

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東日本大震災を機に、市民や自治体が電気を自前で作り、管理しようとする動きが広がっている。一般家庭が電力会社を選別して電気を買うことができる電力自由化の方向が進むなかで、「電気を自治する」時代が始まりそうだ。

 

 

4都県の生協、秋田に風力発電

 「原発から不買 目標」

 

秋田県にかほ市。日本海を見渡せる小高い丘で、高さ80メートルの真新しい風車が回っている。

  首都圏4都県の生活クラブ生協(会員数20万人)が出資し、株式会社「市民風力発電」(札幌市)が建てて管理。出力2千キロワットで、4月から4生協の事業所など約百ヵ所の3割分を賄っている。今月11日、地元へのお披露目式があり、「夢風」と名前がついた。

  生活クラブ生協神奈川の半澤彰浩・常務理事は「この風車は私たちの自前電源です。原発で発電した電気の不買を実現し、将来は発電、送電、配電の自主管理を目指したい」という。

  「夢風」がつくった電気は環境価値とセットにした契約のため、7月から始まる全量固定価格買い取り制度(*1)の対象にならず、送電線も東北電力に借りなければならない。しかし送電線が自由化されれば、発電だけでなく、管理を含めた「エネルギー自治」が実現する。

  首都圏発の「電気をつくる」試みは、他の生協にも広がる。九州や中国、関西地方に展開するグリーンコープ連合(会員数40万人)は、風車の建設を検討。 「発電を国や電力会社に頼ってきた姿勢を反省しなければ、と考えている」と担当者はいう。将来は地域ごとに風車を建てることも話し合われている。

 

(*1)全量固定価格買い取り制度

  自然エネルギーを普及させるため、発電した電気を一定期間、固定価格で買い取るよう、電力会社に義務づける制度。太陽光、風力、地熱、中小の水力、バイオマスが対象で、かかった費用は利用者の電気料金に転嫁される。

 

 

都、天然ガス発電所を建設準備

 「東電の独占 許さず」

 

「自前の電気をつくる」動きは自治体にも広がる。

  東京都は、民間資金を活用し、原発1基分にあたる100万キロワット規模の天然ガス発電所の建設準備を進めている。17日の会合で、候補地を江東区の東京湾岸など3ヵ所に絞った。東日本大震災後に都民に計画停電を強いた反省からリスク分散が目的だったが、「東電の地域独占を許さない」(猪瀬直樹副知事)との戦略的狙いもある。

  電力自由化については経産省の電カシステム改革専門委員会で議論が進む。家庭向けの電力販売を自由化する方向が18日に決まり、2年後にも、原発を持たない会社を選んで電気を買うことができる見通しだ。ただ、送電線の自由化は施設・整備の必要があり、時間がかかりそうだ。

(菅沼栄一郎)

 

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(生活クラブ連合会HP メディア紹介より)