活動紹介

農水省通知 「食品中の放射性物質に係る自主検査における信頼できる分析等について」をめぐる見解

 

2012.4.24 生活クラブ連合会

 さる4月20日、農林水産省は標記通知を全国の食品関連270団体に送付し、放射能検査の信頼性向上と自主基準の運用自粛を要請しました。これに先立つ4月17日、生活クラブ連合会は農水省より個別に、この件についての面会を求められその日程を5月上旬に設定しましたが、今回の通知はこの面会を待たずに発表されたものです。
 今回の農水省の通知内容は翌日からの新聞などの報道によって社会的な反響も大きく、生活クラブ連合会は報道各社から取材を申し込まれました。一部報道が先行するかたちになりましたが、ここに見解を発表することにより、提携生産者をはじめとした関係各位のご理解を乞うものです。

 

1.生活クラブは自主基準の運用を継続します

 

生活クラブは安全や安心を他人任せにすることなく、自ら「素性を確かめる」ことを活動の基本に置きつづけてきました。残留農薬や食品添加物、容器包装に含まれる化学物質等について国より厳しい自主基準を設定し、実際に生産現場と生産物に反映することを、生産者と消費者の継続的な協議と共同作業によって実現しています。
放射能の食品汚染に関しては、チェルノブイリ原発事故(1986年)後に自主基準(当時の国基準の10分の1=放射性セシウム37ベクレル/kg以下)を掲げ、20年以上にわたる自主検査の継続によってその適合を担保してきました。
しかし輸入食品を想定したこの自主基準は、福島第一原発事故により運用停止を余儀なくされました。国内における前代未聞の苛酷事故の発生に見舞われ、食品全般への汚染影響を示すデータやそれを得るための測定体制が圧倒的に不足するなかで、従来の自主基準を形だけ継続することは、結果として消費者を欺くことになる可能性があったからです。
したがって過去1年間、生活クラブは放射能検査体制を充実させ、データの蓄積と徹底した情報公開を最優先の課題としながら、組合員の強い希望でもあった客観的な根拠性をもった自主基準の再設定の条件づくりに努めてきました。自主基準の設定が“消費の現場の混乱”を招くという指摘は、生活クラブにおいては全くあてはまらないと言えます。
以上の歴史経過に基づけば生活クラブは、今後、自主基準の運用を継続するなかで基準値の主体的な見直しはあったとしても、政府の要請を受けて撤回することはありません。

 

2.生活クラブの自主基準はこれまでの自主検査の実績を踏まえた責任ある基準です

4月1日付で運用を開始した生活クラブの自主基準(暫定)は、福島第一原発事故直後より開始した自主検査(2012年4月現在・累計約17,000件)の結果データをもとに、消費者・生産者代表委員で構成する「自主管理委員会・放射能基準検討専門委員会」が原案を作成したものです。
過去一年間の検査内容はあらゆる食品ジャンルに及び、牛乳は原乳を毎集乳日単位で、農産物については品目および出荷産地別に数次にわたる検査を実施しました。加工食品についてもほぼ全品目の検査実績を持っています。生産者・産地の実情を無視して単なる“販売戦略”として定めた「過剰な規制」にあたるものではありません。また、万が一、自主基準を超える食品があった場合は、供給中止によって生産者が受ける損害を独自のしくみをもって補償することはもちろん、当該生産者の汚染の実態把握や低減対策など生産継続・出荷再開の可能性を生産者とともに追求していく方針です。自主基準が“生産者を一方的に苦しめる”という主張もまとを得たものとは言えません。
その検査方法の科学的妥当性については私たちも必要だと考えています。生活クラブの放射能検査機器は多くの自治体で採用されているNaI(TI)シンチレーションカウンターです。今後も生活クラブ内部での分析の精度管理などマネジメントを向上させることに努めるとともに、外部研修などにも積極的に参加して信頼できる放射能検査と情報公開をすすめていきます。また、自主基準を上回る可能性のある検体があった場合は、厚生労働省の登録検査機関などにも発注して二重の検査を行うなど、十全を期していきます。

 

3.消費者は信頼できる事業者の自主基準を求めています

農水省の通知は、国の新基準が国際的に承認された基準よりさらに厳格に設定されており、これより低い数値設定を求める消費者や事業者の行動が「非合理的」であるとの認識に立っていると理解します。
私たちは事業者の自主基準が次々に生まれる背景には、国の基準や放射能検査、情報公開に対する国民の根深い不信感があることに気づいています。問題は科学的妥当性にあるのではなく政府の信頼性にあります。収束していない福島第一原発事故で苦しむ国民を放置したまま、危険な原発の再稼働をもくろむ姿からは、政府は国民を守らないように見えます。そんな政府が国民の信頼を得ることはできないでしょう。
事業者の自主基準の設定の動きは、目に見えない放射能という脅威に対する「国民の知る権利」の実現手段であるといえます。そのための国民の努力を政府が阻むようなことは、日本国憲法が保障する「基本的人権」に反する規制になりかねないと危惧します。
生活クラブではこれまでも政府に要望をしてまいりましたが、ストロンチウムやプルトニウムなどの核種の調査を国で徹底し、国民に公開する必要があると思います。また4月からの新基準を最終のものとせず、継続して見直していき国民の信頼を得るよう放射能対策を推進するべきと考えます。なお国の新基準についての生活クラブ連合会の意見は、2012年2月1日に厚生労働省へのパブリックコメントとして提出しています。
生活クラブはこれからも組合員と生産者で連携して、放射能問題に対しても“食の自治”を放棄することなく追求し、国内自給力の向上に寄与したいと考えます。

以上

    生活クラブの放射能対策

    農水省の通知(農水省のホームページにリンク)

 

(生活クラブ連合会ホームページ ニュース&トピックス4月27日記事)